【第10回】習うより慣れろ!校正の心得

“編集力”を鍛える!
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新人編集者に向けたこの特集も、とうとう第10回目を迎えました。

今回は、苦手としている人も多いかもしれない「校正」。

誌面の精度を上げる上で欠かせない作業ですが、校正した後の誌面を見れば、その人の性格が大体わかるといっても過言ではありません。

特に、雑な人はもろに出ますからね。

 

巷では「校正のコツ」などのタイトルで、さまざまなノウハウを学ぶことができます。

ですが、ハッキリ言ってそれを読んだところであなたの校正スキルが上がることはありません

現役編集者である私が、なぜなのか?を順番に説明していきたいと思います。

 

そもそも校正って?

校正とよく似た言葉に「校閲」があります。

ざっくり言うと、両者の違いは以下の通り。

 

・校正……表記確認。表記ゆれ、用法・用語の統一などのチェック

・校閲……事実確認。住所や電話番号、正式名称など情報の正誤のチェック

 

それぞれを専門とする人のことを「校正さん」「校閲さん」などと呼びます。

ですが一般的に、編集者が行う「校正」には、「校閲」も含まれています。

 

誌面のクオリティをアップしながら、同時に事実確認を丹念にチェックする姿勢が求められるのです。

 

校正はノウハウではなく根気である

チェック項目としては、ライターが原稿を納品してきた際に行うチェックと基本的には同じです。

 

【第8回】ライターから納品された原稿チェック15のポイント
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レイアウトが完成した状態で、よりくまなく確認するというわけです。

 

編集者にはさまざまなスキルが必要だということはこれまで述べた通りですが、「校正力」だけは、経験を積まない限り実力がアップすることはありません。

その理由を説明します。

 

理由①会社によってルールが違うから

つくづく「つぶしのきかない仕事だよなぁ」と感じるほど、表記ルールやチェック項目、進行方法などは、会社によってさまざまです。

だから、会社が変われば「一から新しいルールを覚える」以外に選択肢はありません。

 

どうやって覚えるのかというと、マニュアルがある場合はそれを確認するか、バックナンバーをひたすら振り返るか、上司や先輩に質問するか、この3つ。

華やかな職業だと誤解を受けますが、めちゃくちゃ地味なんですよね……。

 

しかも、厳格にルールが決まっている会社はそれほど多くないので、その場その場で空気を読む力も必要だったりします。

まあ、最初のうちはとりあえずなんでも質問しておきましょう。

 

フリーランスで何社かの仕事を同時進行している人はもっと大変ですね〜。

 

理由②そもそも何をチェックすればよいかわからないから

明確なルールが存在しない以上、「どこを校正すればよいか」に正解はありません。

だから、何度も注意されたり、間違えたりして、少しずつ覚えていくわけです。

それを繰り返していくと、少しずつ自分のなかで「ここを見たらよいのか」という基準が出来上がっていきますね。

 

『スラムダンク』で、バスケ素人の桜木花道には「経験」が圧倒的に不足している、と牧が指摘する場面があります。

ディフェンスで相手の動きを読む力は経験でのみ培われるもので、生まれ持ったスピードやジャンプ力だけでは限界がある……とまあこういう話なんですが、校正に関してもまったく同じです。

 

 

以上の理由から、ノウハウを学ぶよりも実践あるのみ、そして、緻密な作業を続ける「根気」が何より大切であると私は思います。

そのために、前提となる3つの事柄を覚えておくことをオススメします。

 

自分が読者になったつもりで読む

原稿を読むときは、いつだって「それを初めて読んだ人の気持ち」を想像しながら読むことが大切です。

自分が書籍や雑誌を手に取るときは、何か知りたいことがあるときのはずです。

そんなとき、必要な情報が書かれていなかったり、なかなか目的の情報にたどり着けなかったりしたらどんな気持ちになるでしょうか。

 

また、間違った情報が掲載されていたら?

私が旅行雑誌の出版社に在籍していたころ、よく読者からお叱りの電話がかかってきていました。

 

取材から発行までの間にはタイムラグがあるので、店側の都合で営業時間などが変更している場合もありますが、単純ミスの場合もあります。

最新の情報は事前にホームページで確認を、と案内してはいますが、楽しい旅行が台無しになってしまったことに変わりありませんよね。

 

自分が手を抜いたら、誰かの時間を無駄にしてしまうかもしれない。

そのことを忘れずにいることが大事であると思います。

 

必ず出力&ダブルチェックをする

画面上で見るのは避け、必ず印刷しましょう。俯瞰で見ることができます。

また、正直、自分一人しかその原稿を見ていないのであれば、間違えて当然です。

人間の目とは不思議なもので、自分の都合のよいように文字を読めてしまうものですからね。

 

必ず、ダブルチェック、トリプルチェックを行うよう会社に提言してみましょう。

校正さんや校閲さんに仕事を頼めたら、それだけで安心感は違います。

 

どうしても無理な場合は、時間を置いて確認すること。

できれば、最低でも一日は空けたいところですね。

 

誰が見てもわかる赤字原稿にすること

印刷所やデザイナーとのやり取りをスムーズにするために、編集者が覚えておきたい「校正記号」。

しかし、これは何度がやっていくうちに自然と覚えるので、無理して使う必要はありません。

それよりも大事なことは、「指示が明確に相手に伝わること」。

目指すのは、小学生が見てもわかる赤字原稿をつくることです。

 

例えば、

・どの写真と差し替えるのかわかるように、出力し、合番をふる

・どこからどこまでにかかる指示なのかわかるように、まっすぐ線を引く

・きれいな字ではっきりと文字を書く

・原稿に重ならないように、余白部分に指示を書く

これだけ。

 

上記は、赤字原稿を見た人が「うわぁこんなに修正がある……」と嫌な気分にならないように、なるべくシンプルに見えるようにという心遣いでもありますね。

 

まとめ

編集業務のなかでもかなり地味な校正作業ですが、多くのWEBディレクター、WEBライターには欠けているスキルでもあるので、身につけることであなたの武器になるかもしれません。

少しでも楽しさを見いだせたり、それほど苦ではないと感じたりできる人は素質アリです。

表記ゆれが気になって雑誌の内容が頭に入ってこない、という人はもう一人前です(笑)

 

一朝一夕とはいきませんが、ぜひ根気よく続けてみてください。