書店に並ぶ本の数々。
どの本を手に取るかを決めるのは、デザインがすべてと言っても過言ではありません。
「デザイン」と言うと「色やイラストで装飾すること」と思われがちですが、広義では、「客が書店に入ってから本を購入するまでのすべてを設計すること」をデザインと呼びます。
文字の大きさやフォントの種類、入れる位置などもデザインの一種ですね。
デザインを実際に完成させるのはデザイナーの仕事です。
では編集者は、どのように関わっているのでしょうか。
デザインってどうやって作られるの?
雑誌やポスターなど、紙の印刷物のデザインをする人のことを「グラフィックデザイナー」といいます。
グラフィックデザイナーは、デザイン事務所(大体1〜5人の少人数規模)かフリーランスで活動している人が多いです。
グラフィックデザインに使用するのは、Adobeソフトと呼ばれるInDesign、Photoshop、Illustratorの主に3つ。
ざっくり言うと、
・InDesign(インデザイン)……ページ数の多い本の制作
・Photoshop(フォトショップ)……写真の加工
・Illustrator(イラストレーター)……イラスト・図版の制作、ポスターの制作
といった用途の違いがあります。
一括で色んな操作をすることができるので、雑誌や書籍などはInDesignでつくることが現在では主流になっています。
ただ、まれにIllustratorで制作するデザイナーもいるので、この辺はあらかじめ印刷所とすり合わせをしておく必要があります。
デザイン発注の心得と準備
デザイナーにデザインを発注する際には、さまざまな準備が必要です。
大事なことは、「なるべく相手の手間を省くこと」。
これは覚えておいてください。
さて、準備するものは下記の3つ。
□写真などの素材
□テキストファイル
□ラフ
テキストは、タイトル、キャッチコピーなど主要な部分のみで結構です。
本文は必ずしもすべて完成している必要はありません。
写真の選び方
インタビュー取材などの場合、カメラマンから大量に写真が送られてきます。
これをこのままデザイナーにメールなどで送るのはNGです。
なるべくこちらで選んでから送るようにしましょう。
かといって、例えば3点掲載予定なのに3点しか送らないなど、あまり少なすぎるのもよろしくありません。
構図やポースが制限されてしまうと、それだけレイアウトの選択肢も減ってしまうからです。
なので、
□構図(縦位置・横位置、寄り・引き、上半身・全身)
□ポーズ(あり・なし)
□身体の向き(ノド側・小口側)
などバリエーションを考えて、各2〜4枚ずつくらい送ってあげるとよいのではないでしょうか。
同じ構図・同じ表情の写真を何枚も送る必要はありません。
自分の写真選びにイマイチ自信が無いという人は、「予備」というフォルダを作って、使わない予定の写真をその中に入れておいてください。
デザイナーが「なんか写真イマイチだな」と思ったら勝手にその中から探してくれるので、何往復もやり取りする必要がなくなります。
あと、人物写真の場合は、やっぱり被写体が魅力的な表情で写っているのがよいですね。
男性編集者が選ぶと、なんでこんなブスで太って見える写真をメインにするの!?と思ってしまうことがよくある……。
だから、その人のキャラクターや魅力は何か?を見極められる人間観察力も必要になると思います。
ラフの整理の仕方
ラフの書き方については、以下の記事で紹介しています。
ここで例として出しているのがこのラフ。
一応、「日本全国のお花見スポット紹介」という仮の企画を想定しています。
しかし、これだけでは完成とはいえません。
正直、版面(実際に印刷される範囲)の中を書いたところであまり意味はないのです。
だって、これだけじゃ何がしたいのかよくわからないですよね?
重要なのは、むしろ版面の外に書き込むことと言ってよいでしょう。
例えばこんな感じで。
「このくらいわかるだろう」と思わずに、伝えたいことはきちんと言葉にして書きましょう。
自分基準で判断してはいけません。
ちなみに文字の色を変えたのは、カテゴリ分けをわかりやすいようにするためです。
普段はここまでしなくて大丈夫ですよ。
こっちは私がふだん書いている感じの手書きラフ。
書き間違いが多いですが、ふだんから多いのでそのままにしてみました……。
あと、写真を使う場合は写真の合番も記載します。
「Ph①」というやつですね。Ph=Photo、Ill=Illustです。
写真のファイル名は変更するか、面倒くさい場合はサムネイルを印刷して、合番を手書きでふっておくとよいでしょう。
修正を依頼するときの注意
大体、中2日〜一週間程度でデザインが仕上がってきます。
(スケジュールはきちんと確認してくださいね)
仕上がったデザインを見て、「なんか違う」と思ったら、もちろん修正を依頼してOKです。
ただし、「なんか違う」の「なんか」を言語化する作業が必須事項となります。
思いを言語化しよう
なるべく具体的に伝えることが大切ですが、具体的にするのは「結果」ではなく「意図」。
「ここを赤にしてください」「ここを四角で囲んでください」というように、「結果」を「指示」するのは望ましくありません。
「なぜそう思うのか?」を相手にもわかるように伝えてあげましょう。
「全体的に単調というか、のっぺりして見えるので、もう少し写真の大きさに強弱をつけてもらえますか?」
「余白が目立ってさみしい印象がしました。お出かけの本なので、もう少し楽しい感じでお願いしたいです」
「少しごちゃついて見えるので、色数をもう少し絞ってみてはいかがでしょうか?」
などなど。
なかには、自分は変だと思わなくても、上司から指摘されて直さなくてはならない場合もあると思います。
自分の中で消化できていないのに、上司からの言葉をそのまま伝えないように。
突っ込まれたときに的確な返答ができず、余計に混乱させてしまう場合もありますからね。
上司といっても身内なので、「何がダメなんですか?」「どこを直せばいいですか?」と食い下がってみてください。
修正依頼はメールで?電話で?
昨今、「いきなり電話をかけてくるヤツは非常識」という風潮がありますね。
個人的には、仕事なんだし電話くらい取れよと思いますが、わからんでもないです。
ただ、デザイン修正に関しては、誌面に赤字を入れてメール添付で送るのが無難です。
口頭だとすぐ忘れてしまいますからね。
口で伝えたいことがあったら、メール送信後30分くらいしてから電話をかけ、「何かわからないところありました?」とフォローするのがよいですね。
相手への敬意も忘れずに
また、修正を依頼するのは正当な行為ですが、ここで忘れてはいけないのは、
「自分が作ったものを否定されたら、大なり小なり嫌な気持ちになる」ということ。
別にへりくだる必要はありませんが、一言「修正をお願いします」と言われるのと、「この部分はとてもいいと思うけれど、こうしたらもっとよくなると思う」と言われるのとでは、受け取る側の印象はまるで違うものになりますよね。
「お金払っているんだし当然でしょ」とか言わない。
というか、ギャランティをいくらで発注しているか知らない人はすぐ会社や上司に確認しましょう。
安いギャラでこき使われてモチベーションを保てる人はあまりいませんからね……。
あと、いいなと思ったときは素直にほめること。
「イメージぴったりです!○○さんは仕事も早いしいつも助かってます!」とか。
普段の人間関係でも一緒ですね。
まとめ
最後に、大事なポイントをまとめます。
・なるべく相手の手間を省く
・「意図」を具体的に、言葉にして伝える
・ただし、イメージを限定させすぎない
・修正依頼はメール+必要に応じて電話で
・敬意を忘れない
忙しさに忙殺されていると忘れがちですが、すべて基本的なことです。
気持ちよく仕事をしてもらうために、気をつけたいですね。