原作との違いは? NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』がすばらしい

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毎週火曜10時より放送中のドラマ『しあわせは食べて寝て待て』。実写化による原作改変について大きな論争が巻き起こる昨今、NHKドラマは原作や世間の声に対して誠実に向き合っている印象があります。このドラマは全体的に原作に忠実ですが、毎回ちょこちょこと改変している箇所も見受けられます。

しかし、その理由が「現場や予算、ストーリー上の都合」とはひと味違うんです!(たぶん)

原作漫画ファンもびっくり、その改変箇所と理由について考察します。

原作『しあわせは食べて寝て待て』ヒットのきっかけ

原作は月刊誌『フォアミセス』で連載中の漫画『しあわせは食べて寝て待て』。難病である膠原病に罹患したことにより働き方の変更を余儀なくされた主人公が、薬膳を通じてしあわせな生き方を模索するストーリーです。

アメトーークの「マンガ大好き芸人」で麒麟の川島さんが紹介し、一躍人気になりました。余談ですが、「どう見ても30~40代女性向けの漫画を、なぜ男性の川島さんが薦めているの?」と不思議に思った人もいるかもしれません。

実は川島さんの奥様も大の漫画好きで、オススメ作品を紹介し合っているそうですよ。なんて素敵なエピソード‼ 夫婦間だと「なんでわかってくれないのよ!」と喧嘩に発展しやすいことでも、漫画を通じて理解が促進されることは多いはず。最近は女性の心情を繊細かつ丁寧に描き、「これ男性にこそ読んでほしいな~」と感じる本当に作品が多いので、こういう人がもっと増えるといいですね。

ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』は原作とどこが違う?

本題です。

主人公の麦巻さとこは、デザイン会社で週4日のパート勤めをする38歳。病気をきっかけに自信を失ったせいか、あるいはもともと持っている素質なのか、ちょこちょこ卑屈な言動も見え隠れする【等身大の30代女性】と個人的には思います。

人間ならば「あわよくば精神」や無意識の偏見などは多かれ少なかれ誰しも持っているものですが、漫画になるとちょっと気になるのか、アプリのコメント欄では主人公の言動に対して辛辣な感想を投稿している方がまあまあ見受けられます。

フィクションだけでも「前向きでひたむき」とか「素直で応援したくなる」といったヒロイン像を求めたくなるのかもしれません。

そんな「ん……?」と感じる些細な言動に対し、ドラマ版『しあわせは食べて寝て待て』は見事に改良を加えている点が印象に残りました。NHKの人は、漫画の口コミを全部読んでいるんでしょうか? お見事!!

具体的にどこが原作と変わっていたのか、【1~6話まで】覚えている限りで振り返っていきます。

【第1話】医師「婚活でもすれば?」

病気でフルタイムは働けないけれど生活費が苦しい、という主人公の悩みに対して医師が婚活を提案するシーン。原作の第1話だと「セクハラかよ」と心の中で悪態をつくに留まりますが、ドラマ版では「セクハラですね」と同席していた看護師とともにきちんと指摘。このあたり、さすがNHKといったところです。

【第2話】無神経な詮索をしてしまったら……?

さとこの職場のデザイナー・巴沢さんは、さとこがなんで週4日勤務でも悠々自適(に見える)に暮らせているのか興味津々。疑問を投げかけられたさとこは、病気のことを告白します。

多くの人は「エ…あ……えっと、ごめんなさい……」みたいなリアクションになりますよね。原作でもそうでした(第5話)。

ドラマ版の巴沢さんは「私、無神経に詮索しちゃってごめんなさい!」と即座に謝罪。この辺りは、「そっとしておいてほしい」「謝られると余計にみじめな気持ちになる」など、人によって感想は異なるかもしれません。

だけど、相手を傷つけてしまったかもしれないことに対してこのスピードで謝れる人はなかなか居ないでしょう。私は、巴沢さんの素直な人柄に非常に好感をもちました。

【第4話】麦巻さん、ニートに偏見?

レンタルルームの副業を始めることにしたさとこ。部屋の模様替えの助っ人にと、同じ団地に住むニートの八つ頭くんが初登場。テキパキと部屋を片付ける八つ頭くんと司さんを見て、原作のさとこは「この人たちこんなにシャキシャキ働けるのに、どうして稼ぎに出ないんだろう」と心の中でつぶやきます(第15話)。

これに対しては「自分も見た目にはわからない病気が原因で働けなくなったのに、他人の事情を配慮することはできないのかな?」という声も。このつぶやきは、ドラマ版ではカットされていました。

【第5話】司さんの家族問題が明らかに

司さんが、初めて自分の家族に言及するシーン。麦巻さんには「父親はいない」と説明したのですが、その後の鈴さんとのやり取りで、実は父親が生きていることが判明。うっかり口を滑らせてしまった鈴さんに対し、「そこは多分私が踏み込んでいいテーマなので」と原作版の麦巻さんはグイグイ聞き出そうとします(第22話)。

このシーンは、ドラマ版だと「何か事情があることを察した表情」に留められていました。やっぱり他人の家族の事情に興味本位で首を突っ込むのは……ねぇ……。

ちなみに前話のニートに対する考えもそうですが、こうした言動は、麦巻さんが司さんに対してほんのり好意を持っていることに由来するのだと思います。(あくまで推察ですが、「司さんがバリバリ働いていたら、私は結婚して今の収入でも十分やっていけるのに」みたいな……)

ただし、ドラマ版では2人から恋愛感情を匂わせる描写はまだ出てきていませんね(7話時点)。

【第6話】麦巻さんのスマホ覗き

お隣さんの騒音に耐え兼ね、団地から引っ越すことを検討するイラストレーターの高麗さん。スマホで物件を調べていると後ろから麦巻さんが現れ、「引っ越すんですか?」と尋ねるのが原作版。「後ろから覗かれるの嫌だなぁ」というコメントを反映したのかどうか知りませんが、ドラマ版の麦巻さんは検索画面を見たことに触れておらず、自然と高麗さんが悩みを打ち明ける流れに変わっていました。

【第6話】反橋さんのキャラ

原作から最も大きくキャラが変わっているのが、北乃きいさん演じる反橋さんではないでしょうか。原作では28話あたりで初登場しますが、ドラマでは序盤から登場。スーパーで麦巻さんに声をかけるシーンは、ドラマ版オリジナルです。

原作では若干キツめの性格が描写されていますが、北乃さん自身の愛らしさもあってかドラマ版反橋さんはかなりほんわか系。

原作ではお肉を食べない理由について「お腹の具合が良くなくて」としか説明していませんが(第29話)、ドラマ版では「男の子には肉を食べさせなきゃ」「料理は絶対手作り」といった母親の押し付けがどんどんしんどくなっていった……と複雑な感情を吐露します。

私はベジタリアンではないので、原作を読んでいるときは反橋さんの気持ちがなんとなくしか理解できなかったのですが、ドラマではすごく丁寧に表現されていて良かったと思います。

まとめ:原作リスペクトの改良がすばらしい!

改変した箇所もありますが、心がじんわり温かくなるシーン、胸を打つ台詞などはそのまま。NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』は近年No.1といっても過言でない原作リスペクトのドラマだと感じました。

さて、今夜は第8話が放送、そして来週5月27日(火)22:00~はいよいよ最終話。イチ視聴者として、楽しみに待ちたいと思います。