先日、以下の記事をアップしましたが、いよいよ『ハケンの品格』第一話の放送がスタートしました。
初回は、正社員から派遣社員へのセクハラ問題が描かれました。
時代錯誤な演出が多かった点は否めませんが、性被害に遭った女性に対する偏見自体は未だに根強く存在します。
それに対し、スーパー派遣・春子はどう動くのか?に注目して観てみた感想です。
ざっくりあらすじ
セクハラ被害に遭う派遣社員・福岡亜紀を演じるのは、ビズリーチCMでお馴染み、私生活も話題の吉谷彩子です。
舞台となる株式会社S&Fに派遣されてもうすぐ3年。
契約を打ち切りにされかけていたのですが、彼女に目をかけている人事部の社員が上に掛け合ったお陰で、無事契約を更新することができました。
実はこの人事、亜紀に下心を持ち、執拗に迫っていたのです。
しかし、契約打ち切りに怯える亜紀は無下に断ることもできず、二人で食事に出かけます。
偶然、セクハラ現場を見てしまったのは新人派遣・千葉小夏(山本舞香)。
曲がったことが嫌いな彼女が黙っておけずに告発したところ、なんと人事部に監禁される事態へと発展してしまいました。
ワンポイント解説「派遣3年ルール」
派遣社員を3年以上、同一企業で受け入れることはできません。
それでも3年以上雇用したい場合、以下のどちらかを選択する必要があります。
①派遣先企業で直接雇用する
②無期雇用派遣として働く
①を選択すると、派遣先企業は派遣会社に「紹介料」を支払わなくてはなりません。
派遣労働の基本的な仕組みはコチラ↓
②無期雇用派遣とは、派遣スタッフが派遣会社と契約を結び、派遣会社の正社員(のような扱い)としてさまざまな企業に就業する制度のこと。
ただし、ずっと同じ企業に勤められる保証はありません。
ドラマ内でセクハラ社員が言っていた「抜け道」とは、おそらく一旦今の契約を終了して、別の部署で再度契約を結ぶことでしょう。
部署が違うから、「3年契約」は一旦リセットされるということです。
かなりグレーというか本当はダメだと思いますが、実際にコレをやる企業は少なくありません……。
セクハラ被害者は暗くふさぎ込んでいなくてはならないのか
話は戻ります。
二人を監禁した人事部の人たちは、「セクハラは二人のでっち上げである」という憶測のもと、次のような言葉を投げかけます。
―「食事には、どんな服装で行ったのか」
―「胸元の空いた服装を着て、あなたから誘ったんじゃないの?」
―「本当にセクハラ被害に遭ったなら、次の日笑顔で出社なんてできないはずだ」
―「本当にセクハラ被害に遭ったなら、お礼のメールなんて送れないはずだ」
―「女の私から見てもそうだと思う」
「今時、大手企業であんな酷いセクハラもパワハラも無いよ」という意見はもっともですが、実際に上記のような価値観を持った人は多いんですよね。
少し前ですが、レイプ被害をめぐる訴訟で損害賠償命令を受けた元TBS記者が、「本当に性被害に遭った人に『被害に遭ったら、記者会見の場で笑ったりすることは絶対ない』と聞いた」という趣旨の発言をしたことが記憶に新しいです。
性被害と正常性バイアス
性暴力の被害者が、まるで加害者であるかのように責められることを「セカンドレイプ」といいます。
「あなたから誘ったんじゃないの?」という心無い言葉以外に、「被害者のあるべき姿」を押し付けることもセカンドレイプに含まれます。
すべての被害者が部屋に閉じこもってふさぎ込んでいるかというとそんな訳はなく、むしろ自分にとって重大な出来事が起こったときだからこそ、普段どおりに生活を送ろうとすることは何ら珍しいことではありません。
何らかの異常事態が起きたときに「これくらい正常の範囲以内だ」「自分は大丈夫」と思い込み、心を平常に保とうとする働きを「正常性バイアス」と呼びます。
震災などが起こったとき、咄嗟に行動できず、逃げ遅れたりする際に使われる心理学用語です。
人間が自分の心を守るための防御反応ですね。
春子の言葉
チェーンソーで監禁部屋のドアをぶった切り、助けに来た春子。
最後に残した言葉が話題になっています。
「死ぬほど嫌な目に遭った次の日も、派遣が笑顔で出勤するのは、生きるためです」
「生きるために、泣きたくても、笑ってるんです」
「有給たっぷりの皆さんとは、違うんです」
女性の人権うんぬんではなく、「派遣」として生きてきた春子ならではのよい台詞でしたね。
派遣も有給あるけどな!
まとめ
続編が常に前作と比べられるのは宿命ですが、「現実離れしている」との指摘は前回もありましたよね。
ただ、今の社会情勢を考えると、このままコメディ路線全開でいくかどうかはまだわかりません。
2ヶ月も撮影が中断されたという異常事態。そして、今ほど「働き方」が問われる時代もまたとないかもしれません。
初回も「桜を見る会」「日本沈没」などのワードが盛り込まれましたが、今後、どこまで現実社会のエッセンスを取り入れた脚本になるのか、目が離せませんね。