「文章を書く仕事」と聞かれて、真っ先に思い浮かべる職業は何でしょうか?
脚本家、小説家、作詞家、ライター、編集者、WEBディレクター、ブロガー……。
ざっと挙げただけでもこれだけありますが、なかでも混合されがちなのが「ライター」と「編集者」ではないでしょうか。
上記でも紹介していますが、サッカーに例えるなら、ライターはプレイヤー、編集者は監督の役割をこなしています。
つまり、取材して原稿を書くのがライターで、それをチェックするのが編集者の仕事というわけです。
では、編集者として他人が書いた文章をチェックするとき、どこに気をつければよいのでしょうか?
15のポイントをお伝えします。
ライター原稿はココを見よ!入稿前のチェックリスト
ライターから原稿が送られてきたら、以下の点に注意して読み進めましょう。
なるべくプリントアウトして、赤ペンでチェックを入れます。
表記のルール (1)用法・用語は統一されているか (2)重複表現はないか (3)句読点は適切に使われているか 見出し (4)伝えたい内容が要約されているか (5)読者の関心を引く言葉になっているか (6)語呂はよいか (7)各見出しの体裁はそろっているか 表現方法 (8)文末に同じ表現が続いていないか (9)同じ言葉が何度も出てきていないか (10)同じ内容が何度も出てきていないか (11)キャプションは写真の補足説明となっているか (12)専門用語に対する説明はあるか (13)必要以上にカタカナ語が出てきていないか (14)略語は使われていないか (15)文字量・情報量は十分か
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
「表記」に気を配れるかが、プロとアマの分かれ道
今は、誰でも文章を書いて、発信できる時代となりました。
ではプロが書く文章と、いわゆる「素人の文章」の違いはどこにあるのでしょう?
そのひとつが、表記ルールの統一にあります。
表記ルールとは、例えば以下のようなものです。
・ある言葉を、漢字かひらがなのどちらを用いて表すか(トジ・ヒラキ)
・数字を用いるときは漢数字か算用数字か
多くのメディアでは独自に表記ルールを作成するか、『記者ハンドブック』などに倣って表記を決めていることが多いですね。
『記者ハンドブック』は登録商標などの使ってはいけない言葉や一般名称への言い換えも記載されていますので、持っていない人は購入するのがオススメです。
例えば、同じページ内に「うれしい」「嬉しい」「ウレシイ」と異なる3つの表記が出てくると、読みづらいですし、気が散って内容が頭に入ってこないことも。
また、「被害を被る」「頭痛が痛い」などのような、重複表現がないかもチェックしましょう。
さらに、ひとつの文が長すぎても読みづらいので、句読点を適切に使って文章を分けます。
初歩的なことですが、意外とできていないライターも多いので、細かくチェックします。
見出しはページの「顔」!
表紙が「本の顔」なら、タイトルや見出しは「各ページの顔」です。
ココで失敗するとそもそも読んでもらえませんから、最も力を入れるべき部分といえます。
大事なのは「(4)伝えたい内容が要約されていること」。
あまりひねり過ぎると何が言いたいかわからなくなりますが、かといって、あまり説明的になりすぎても読者の関心を集められません。
実例として、3つの見出しを考えてみました。お題はコロナ関連です。
A.首相が「全世帯に布マスク2枚を配布」と宣言
B.全世帯が対象!「布マスク2枚配布」と安倍総理
C.「アベノマスク」に失笑……経費200億円か
A.は、「ただの文章」になっていて、見出しの役割を果たしていません。
B.は、Aの言葉を入れ替えただけですが、語呂がよくなりました。
C.は、具体的な数字を入れるなど、「ただの事実」から一歩踏み込んだ内容になっています。
「アベノマスク」のように、キャッチーな言葉を入れたい場合は、その言葉の認知度・伝わりやすさをよく精査してから入れましょう。
高齢者向けの媒体に、突然「タピる」という言葉が出てきても、理解してもらえない可能性もありますからね。
しかしアベノマスクというネーミング・センスにちょっと笑ってしまったのですが、誰が考えたのでしょう。お見事ですね。
(7)各見出しの体裁とは、見出しの長さがバラバラだとデザインとして美しくないので、そろえましょうということです。
例えば、一行の見出しと二行の見出しが混在していた場合、どちらかに統一する。
また、二行の見出しを作る場合、上の行と下の行の長さをそろえる。
ということです。
見出し見出し
見出し見出し見出し見出し
↑こうではなく
見出し見出し見出し
見出し見出し見出し
↑こうする
素人くさくならない表現テクニック
表現方法に関しては、チェックすべき点がたくさんあります。
まずは、(8)文末に同じ表現が続いていないか、(9)同じ言葉が何度も出てきていないか、(10)同じ内容が何度も出てきていないか。
この3つは、似たようなことを言っています。要はバリエーションをつけようということです。
例えば、文末が「〜ました。〜ました。」と続くと、小学生の作文のように単調な印象になりますし、同じ言葉が頻出するとボキャブラリーの乏しさが露呈します。
文末には体言止めを適度に挟んだり、同じ言葉でも「思い」「信念」「信条」「モットー」と言い換えたりすると、テンポのよい文章になるでしょう。
また、本はウェブと違い、掲載できる情報量に限りがあります。
せっかくならスペースを有効に使いましょう。
(10)同じ内容が何度も出てきていないか、とは、本文とキャプションで同じ内容が書かれていることがないようにしましょう、という意味です。
(11)写真のキャプションで、見ればわかるようなことが書かれていないかも要チェックです。
(12)専門用語に対する説明はあるか、(13)必要以上にカタカナ語が出てきていないかは、多少上級者向けになるかもしれません。
自分がどうか、ではなく「一般の人が読んでわかりやすいか」という感覚が必要となります。
というか、日本語で言い換えられるものはすべて日本語にするのが無難であり親切です。
特にビジネス系の記事って本当にカタカナ語が多いですよねぇ……私は正直、何言ってるのかさっぱりわかりません(笑)
「プロジェクトにアサインされた」→「○○の案件担当に任命された」
「アジェンダ」→「課題」
で、いいですよね? だれも困らないですよね??
話は戻って……(14)略語は使われていないか。これも、ついつい日常会話が文章に出てしまう人は多いですよ。
「スマホ」→「スマートフォン」
「ネット」→「インターネット」
と、言葉は正しく使いましょう。こういうところに品性が出てしまうものです。
ただし、少々長いので、2回目以降は(以下、スマホ)としたり、見出しに関しては省略しても構わないと思います。
そして最後!(15)文字量・情報量は十分か。
全体をざっと読んでみて、「なにが言いたいのかわからない」「情報がほとんど書かれていない」という場合は修正が必要です。
また、文字数がきちんとレイアウトに収まるのかどうかも併せてチェックしましょうね。
まとめ
以上、チェックポイントを紹介してきましたが、ライター側からの意見も一言。
複数の仕事を同時に進行していたり、限られた時間のなかで書いていたりすると特に、自分の原稿を客観的に読むことが難しくなります。
そんなとき、第三者として原稿を読むのが編集者の役割なのです。
今回はチェック項目に入れませんでしたが、差別表現や誤解を招く表現など、文章を世に出す上で注意しなければならない点はたくさんあります。
そんなとき、頼りになる編集者がいるというだけで、ライターは安心するものです。
しかし、あまりにも大がかりな修正が必要になった場合、「ライターに書き直してほしい」と思うこともあるでしょう。
これに関しても、いくつか注意点があります。
それはまた次回!