一冊の本ができあがるまでの流れと、編集者の仕事内容について紹介するこのコーナー。
第1回・第2回は概要、
第3回〜第5回までは、ラフ作成とデザイン発注までの流れを解説してきました。
今回からは、新人ライターにも役立つ、取材準備〜原稿チェックの方法を解説していきます。
第6回は、「取材アポの入れ方」です。
まずは取材対象者を探す
「取材アポ」とは、「取材アポイントメント」のことです。
「あなた(会社)を取材したいので、○月×日伺ってもいいですか?」と約束を取り付けることですね。
当然のことですが、まずは「誰に取材するのか?」を決めなくてはなりません。
・媒体のターゲット(性別、年齢層)
・企画内容
によって、ある程度は絞られているはずです。
例えば、ファッション誌なら読者と同年代の女優かモデル、とか。
さらに細かく言うと、以下の事項をチェックする必要があります。
(1)謝礼の有無や金額
支払いに余裕がない場合、喜んで引き受けてくれそうな人に狙いを絞ります。
例)・発売月に何らかのプロモーションを行っている(出演映画が公開、本を出版する等)
・競合の多い業界で、あまり有名ではない人
・趣味でその道を極めているような人(インフルエンサーなど)
・企業(飲食店含む)
・著名だが人徳のありそうな人
最後のはちょっと難しいですけどね、テレビにも出演している有名人にダメ元で連絡してみたら神対応してもらえた!なんていうことは珍しくありません。
一気にファンになっちゃいますよね。
とはいえ、謝礼がない、もしくは僅少という場合は、相手にとっての「協力することのメリット」を提示することが必要です。
宣伝効果であったり、承認欲求を満たしてあげることだったり。
この部分は後述します。
(2)今回初めて依頼する人か否か
過去に付き合いがあるか、人づてに紹介してもらえると非常に楽ですね。
でも、最近はやはりホームページやSNSなどから探すのが一般的になっていると思います。
ホームページから取材対象者を探す場合は、チェックするのは主に3点です。
・更新頻度は適切か?(3ヶ月以上空いていると、返事が返ってこない恐れがある)
・電話番号の記載、お問い合わせフォームはあるか
・企画趣旨に沿った回答をしてくれそうか(ブログや過去に掲載された他媒体の記事などがあれば確認)
まあこの3つは当たり前っちゃ当たり前の話ですね。
候補は多めに出しておくべし!
自分の一存で取材対象者を決められる人はよいですが、そうでない人は候補をなるべく多めに出しましょう。
上司の一声で、最初から作業をやり直すことになるのは手間ですからね。
また、取材を打診して断られることも想定しておくとよいでしょう。
エクセルで簡単な表を作って、一覧にするのがオススメです。
ホームページを見たついでに電話番号や住所をその表に貼り付けておけば、作業も分担できるし管理が楽ですよ。
必要書類を準備
取材対象者が決まったら、いよいよ交渉に入ります。
といっても、いきなり電話をかけるのはNG!
なぜなら、二つ返事で「いいですよ」と言ってくれる人はそうそういないからです。
「では、まずは企画書を送っていただけますか?」とほぼ100%の可能性で言われます。
企画書やFAX送信状、メールの定型文をあらかじめ制作しておきましょう。
また、電話口で色々と質問されることもありますが、あたふたして返答に困っていると、不信感を持たれかねません。
だから、質問されそうなことは前もって準備しておきましょう。
<よく質問されること>
・本の発行はいつ?
・スケジュールは?
・広告料金を支払わなくてはいけないの?
「広告料金」とは、謝礼と逆で、取材対象者から出版社に支払われる金額のことです。
地方の飲食店などに多いようですが、「雑誌に掲載させてくださ〜い」と電話がかかってきて、対応したら広告料金を請求された、なんていうケースはよくあるんですね。
相手の警戒心を解くためにも、企画書か送信状にも一言「掲載料金は頂戴しておりません」「無料です」などと一言記すとよいでしょう。
移動距離・時間を調べる
一日に何件も取材で回らなければならない場合、各物件の位置関係は非常に重要。
あらかじめ住所を調べ、無理なく回れるスケジュールを立てた上で打診するのが無難です。
飲食店の場合、「アイドルタイム」と呼ばれる14時〜17時は対応してもらいやすいので、ここを軸に決めるとよいですね。
交渉するときの注意点
準備ができたら、いよいよ電話をかけます。
メールでもよいかもしれませんが、見ていない、または返信が遅いケースがあるので、電話のほうがよいと思います。
某有名人が「電話をかけてくるヤツとは仕事しない」と言っていますが、そんなことより自分たちのスケジュールを優先してください。
ちなみに、企業の代表お問い合わせフォームにメールすると、該当部署をたらい回しにされた挙げ句、結局忘れられるのが関の山です。
電話するときも、なるべくたらい回しは避けたいものです。
「私、○○と申します。取材のお願いでご連絡したのですが、広報のご担当者様はいらっしゃいますか?」
一番最初に電話に出た人が広報担当者である可能性は低いので、なるべく手短に要件を伝えましょう。
ひどい場合、3〜4回同じ話させられますからね……。
取り次ぐときに要件説明しといてよっていう。
相手にとってのメリットを訴求
一度打診して検討された結果断られると、かなりのタイムロスになります。
なるべく断られるのを防ぐためにも、相手にとってもメリットになることを訴求してみましょう。
例1:発行部数の多さ、全国に配布されることを伝える
「これはよい宣伝になりそうだ」というわかりやすいメリットです。WEB媒体ならPV数ですね。
例2:社会的に意義があることを伝える
医師や学者など、権威のある方と交渉するときには効果的です。「○○に関する啓蒙記事です」など。
例3:読者からニーズが高いことを伝える
「ランキングで御社が一位になりました!」など。
例4:ファンであることを伝える
例3と似てますが、こちらは主語が自分です。「いつも御社の製品使ってて〜」など、熱意を伝えましょう。
媚びていると思われる可能性もありますが、どうしてもその人がいいのであれば別に構わないと思います。
一日で大量に電話する場合の時間管理術
情報誌の場合、一日に40〜50件電話をかけることも珍しくありません。
しかし、企業や飲食店に電話する場合、必ず「かけてはいけない時間帯」が存在します。
企業の場合なら(1)始業一時間以内、(2)12:00〜13:00のランチタイム、(3)夜
飲食店の場合なら、ランチタイムとディナータイム。
この時間に合わせて自分も休憩するのもひとつの手ですが、単にぼーっとしているのは勿体無いですよね。
これは私のやり方ですが、電話をかけられる時間帯に一気にかけて、電話できない時間帯には黙々とメールを送ったり、FAXを送ったりする時間帯にあてています。
そうすると、無駄がないのでオススメです。
送り間違えないようにしなきゃいけないので神経使うケド……。
断られるときは容赦なく断られる
今回の結論です。
残念ながら、どんなに策を練ろうが、断られるときはフツーに断られます。
これは誰でも一緒なので、断られたら「ハイ次!!」という感じで、あまり気に留めないのがイチバンです。
その代わり、引き受けてくださった方に最大限の感謝を注ぎましょう!