元観光情報誌編集者が教える、旅行記事の書き方

旅行記事の書き方
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新型コロナウイルスの影響により、大打撃を受けている旅行関連産業。

本来なら繁忙期であるはずのゴールデンウィークも、外出自粛期間の真っ只中。

すでに倒産を余儀なくされている企業や宿もあり、依然として厳しい状況が続いています。

 

そんななか、政府はコロナ収束後に観光需要を呼び起こす策として、「Go To キャンペーン」を実施することを発表。

「旅行」は、外出自粛解禁後、人々が最も望むことのひとつなのではないでしょうか。

 

そこで、外出できない今だからこそ見直しておきたい「旅行記事の書き方」について、元『るるぶ』編集者の私が紹介します。

自宅でやることがない、今のうちに力をつけたいという人は参考にどうぞ。

 

「Go To キャンペーン」とは?

「Go To キャンペーン」は、観光・運輸業、飲食業、イベント業などを対象とした、官民一体型の取り組みです。

新型コロナウィルス感染拡大により落ち込んだ消費回復に向け、割引券やクーポン券を発行するというもの。

観光業を対象とした「Go To Travel」では、最大1人1泊あたり2万円分の宿泊や地域産品で使えるクーポン券を発行します。

 

東日本大震災後も旅行産業は多大なダメージを受けましたが、今回は観光地自体が自然災害に見舞われたわけではないので、一定の効果は期待できるのかもしれません。

とはいえ、今回の件で職を失ったり収入が減ったりした方は大勢いらっしゃるので、すぐさま旅行に出かける人というと限られそうですね。

 

旅行記事の書き方7つのポイント

さて、ここから本題です。

自身の旅行についてSNSなどでアップする人は多いですが、大抵は「○○に行きました〜」「楽しかった」という個人の感想で占められていることが多いもの。

もちろんそれがダメというわけではありませんが、「多くの人に読んでもらいたい」「共感してほしい」という場合、意識を変えましょう。

 

人は、あなたの話にそれほど興味はありません。

 

私が遭遇したことがあるのは、旅行先での写真を延々と見せてくる人。

いや、確かに「旅行どうだった?」とは聞いたけれども。半分は社交辞令っていうか……。

 

他人が興味を持つのは、「あなたの感想」ではなく「価値ある情報」です。

 

「こんな旅行しているリア充の私、どお?」ではなく、見た人が少しでも役に立つ情報を発信していくという姿勢が何よりも大切となります。

そのためにはどうすればよいのか、押さえておきたいポイントは下記の7点です。

 

1.そこがどんな場所なのか、一目で分かるようにする。

あなたが初対面の人に自己紹介をするとき、いきなり「休日の過ごし方」「将来の夢」といったパーソナルな部分を話したりはしませんよね。

まずは、「39歳会社員です。東京在住で出身地は……」というように、「属性」から入るのが一般的です。

 

文章でもそこを意識しましょう。

一文目に結論を持ってくるようにすると、その後の文章が組み立てやすくなります。

例えば以下の情報です。

 

・都市の位置(緯度・経度、首都、県庁所在地など)

・歴史的特徴(古くから農業が盛ん、港町として栄えた、世界最古の○○、など)

・業種(レジャー施設、飲食店、温泉、宿など)

・ジャンル(郷土料理、名物、観光名所、など)

 

特に海外の場合、いきなり地名を言われてもどこやねん!となるので、補足情報が必要です。

 

NG例:ハワイに行くなら絶対に外せない人気のオアフ島!

OK例1:ハワイ諸島のうち三番目に大きく、州都・ホノルルがあるオアフ島。
OK例2:ワイキキビーチやダイヤモンドヘッドなどの名所があり、ハワイのなかでもっとも多くの観光客が訪れるオアフ島。

 

「オワフ島くらい誰でも知っているだろう」という意識はNGです。

知らない人もいるし、名前は知っているけど何があるかは説明できない、という人も多いのです。

 

また、そこが「何屋さんであるのか」も、はじめに一言で表してあげると親切ですよ。

 

2.易しい言葉に言い換える(なるべく日本語)

1.の「そこがどんな場所なのか、一目で分かるようにする」を意識するにあたり、市区町村や宿、お店の公式ホームページを参考にすることも多いでしょう。

しかし、公式ホームページで記載されている言葉に引っ張られるのはよろしくありません。

なぜなら、プロが書いているとは限らないし、理解しづらい表現になっていることがほとんどだからです。

 

例えば、

アンティパストが自慢の、ハイセンスでラグジュアリーなオーベルジュです。

ではどうでしょうか?言いたいことはなんとなくわかるけれど、「だから何?」って話ですね。

 

こういう場合は、自身で噛み砕いて平易な言葉に言い換える作業が必要です。

特別な日に利用したい、格調高いレストラン。特に前菜は種類豊富です。

 

あと、歴史的記述も小難しくなりがちなので気をつけましょう。

簡単にできる方法としては、熟語をなるべく使わないことです。

 

原爆ドームは、核兵器の惨禍を伝える建築物として世界文化遺産に登録されました。

→原爆ドームは、核兵器の恐ろしさを伝える建築物として世界文化遺産に登録されました。

 

「小学生が読んでも分かる文章」が基本です。

 

3.抽象的・主観的表現は使わない

「きれい」「おいしい」「楽しい」など抽象的・主観的表現は、「ただの感想」です。

なにがどうきれいなのか?その景色を見たことがない人にも分かるように具体的に説明することが大切です。

 

NG例:きれいな海

OK例:エメラルドグリーンの海に太陽の光が反射して、キラキラと輝いています。

 

OK例のほうが、情景が目に浮かんでこないでしょうか?

あとは、「おいしい」ことを伝えたい場合、どんな調味料を使い、どんな味付けで、どんなときに食べたい料理なのか、を説明するとよいですね。

 

4.客観的事実を入れると説得力が高まる

3と同様のことです。

人は肩書に弱いものなので、「自分だけではなく、多くの人がこの店(場所)を評価しているよ!」ということが伝わればよいのです。

 

例えば、

・世界遺産、日本文化遺産に登録された

・日本●●選に選ばれた

・モンドセレクション、B-1グランプリで優勝

・明治の文豪たちが愛した

などですね。

 

5.なるべく値段(税込)を入れる

これができていない人は多いように思われます。

「コーヒーを飲んだ!おいしかったよ!」だけだとただの感想ですが、

「コーヒー(300円)を飲んだ。この値段で本格的な味わいが楽しめるのはお得だ」だと、有益な情報となります。

 

旅行先で有名なお店に行ってはみたものの、値段が高すぎて断念した……という経験はないでしょうか?

ごく一部でもメニューの値段が記載されていると、「気軽に行けそう」「このお店はちょっと入りづらそう」など、読者にとっての判断材料となります。

ターゲットの絞り込みにもなるのでオススメです。

 

6.「話し手の思い」をそのまま記載しない

「店主の〇〇さんが、〇〇という思いでつくったカフェ」といったことが書かれているのもよく目にします。

 

だから、どこの誰とも知らん人の思いなんて興味ないんだってば。

 

読者目線で情報を選びましょう。例えばこんな風に。

 

NG例:「皆にくつろいでほしい」というコンセプトでつくられたカフェ。

OK例:スタッフの心配りも行き届いていて、ゆっくりとくつろぐことができます。

 

コンセプトは、客に届いてこそ意味があるといえます。

「話し手の思い」をそのまま書くことは、独りよがりで無責任な文章といっても差し支えありません。

 

7.表現のバリエーションを意識する

最後は、どちらかというとテクニックですね。

同じ言葉が繰り返し使われていると、単調で知性が低い印象を読み手に与えてしまいます。

特に観光系の記事で多いのが、「絶景」「人気」という言葉のオンパレード。

同じ内容を伝える言葉でも、バリエーションはこんなにあります。

 

絶景……美しい景色、美景、佳景、パノラマ、壮観、雄大、眺望、風光明媚

人気……好評、評判、評価が高い、ファンが多い、流行、ブーム、ヒット

 

こまめに辞書を引くと、バリエーションが増えていくでしょう。

 

まとめ

以上が、旅行記事を書く上で押さえておきたいポイントです。

まだまだ収束の気配はなく、また収束後もすぐに経済活動が再開できるか不透明ではありますが、一日でも早く、日本や世界の人々が旅行や外食を楽しめるようになることを願ってやみません。

今回の記事も参考にしていただき、さまざまな媒体で皆様の旅行記事をお目にかかれる日を心待ちにしております。