グルメ雑誌や観光情報雑誌において欠かせない、飲食店への取材。
主な目的は、(1)写真を撮影すること、(2)味を伝えること、(3)情報収集、の3つです。
私が新人の頃に初めて経験したのも、飲食店への取材でした。
非常にタイトなスケジュールで行われることも多い飲食店への取材。
読者が思わず舌なめずりをしてしまう文章を作り上げるには、どうすればよいのでしょうか?
事前準備や取材当日のポイントをご紹介します。
アポ取りを成功させるには、事前準備をしっかりと!
広告の場合、クライアントやスタッフのスケジュールを前もって押さえておくため、一日かけてじっくりと撮影が行われます。
一方グルメ雑誌や観光情報誌は、一日に5〜6軒の取材・撮影をこなすことは珍しくありません。
そのため、アポイントをスムーズに取れるかどうかが、最初の関門であるといえます。
カメラマンが機材を運べるように、車移動が基本。
そのため、移動時間や渋滞の可能性を考慮したスケジューリングが必須です。
ポイント1:1店舗の所要時間は40分〜1時間
撮影カット数にもよりますが、
・料理2〜3品の撮影(20分)
・店内、外観の撮影(5分)
・インタビュー(5分)
は最低見ておきたい時間です。
しかし、お店に到着してから料理の仕込みを始めたり、料理を作っている間に待ちぼうけをくらったりすると、時間はこれよりも伸びるでしょう。
・どういう企画でどんな料理を撮影したいか、あらかじめ伝えておく
・仕上げ以外の準備をしておいてもらう
と、時間を短縮することができます。
また、縦位置や横位置、切り抜き用など、同じ被写体で複数のカットを要求すると、カメラマンはその度に構図を変えなくてはなりません。
決め打ちができるのであれば、そうするのもひとつの手です。
ポイント2:アイドルタイムと仕分け
ランチタイムとディナータイムを除いた14〜17時は、客足が一旦引き、飲食店にとって一息つける時間帯です。
通称、「アイドルタイム」。
この時間なら取材を受け入れるという飲食店がほとんどです。
とはいえ、すべての店舗の取材をこの限られた時間内に収めることができるかというと、そうもいきません。
アイドルタイム以外でも撮影できそうな店と、そうでない店を仕分けしましょう。
アイドルタイムでないと撮影できない店…ランチ営業をしている店
アイドルタイム以外でも撮影できる店…テイクアウト店、パン屋、喫茶店、11時以降に開店する店、夜しか営業していない店
朝8時から営業している店に「7時から取材させてくれ」と言ってもなかなかキビシイですが、
朝11時から営業する店に「10時から取材させてくれ」は、すんなりOKをもらえることも多いです。
また、夜のみ営業する居酒屋も、真っ昼間の撮影を意外とOKしてくれたりします。
このように、アイドルタイムとそれ以外のアポを上手く組み合わせることで、一日でより多くの取材をこなすことができます。
ポイント3:移動時間をNAVITIMEで確認
車での移動時間は「だいたい」ではなく、きちんと計算しましょう。
私がよく使うのは、NAVITIMEの車ルート検索です。
出発地と目的地の住所を入力することで、移動時間がわかります。
渋滞による遅れは当日にならないとわかりませんが、今まで使ってみて、ほぼ合ってましたよ!
あと、余力があれば、駐車場の位置や台数も調べておくと当日迷わずに済みます。
当日はお腹を空かせておくべし!
グルメ系取材である意味最もツライのが、撮影した後の「よかったら食べていってください」の一言。
もちろん原稿を書くので味見はする必要はありますが、一食丸ごと食べきるのはちょっとしんどい。
しかもそれが4〜5軒続くのです。
「すみません次の取材がありまして〜」と言って逃れるのもひとつの手ですが、なかには「遠慮しないでー!」と勧めてくるパワーの強い方もいらっしゃいます。
せっかくのご厚意を無下にするのも気が引けますし、お昼ごはんやつまみ食いはなるべく避けましょう。
こういうときほど、何も食べられないこともあるけど(笑)
裏技としては、大食漢のカメラマンをキャスティングすることでしょうか。
一人だと挫けそうになりますが、一緒に戦ってくれるカメラマンがいると、本当に心強いです。
新人時代、完全ギブアップな私に変わり、3人前はあろう食事を平らげてくれたカメラマンがいて、恋に落ちそうになりました。
クセのある人も多い
これは飲食店に限った話ではないかもしれませんが、やはり料理人の感覚は、我々とは少し違う部分もあります。
特に多いのは、広告撮影のような対応を望んでくる場合。
いくら企画意図を説明しても「ウチはこれを載せたいんです!」の一点張り。
原稿チェックも、赤字をふんだんに入れてきたりしますねぇ……。
あとは、少し流行っている店だと、やたら上から目線で接してきたりだとか。
クライアントではないですし媚びへつらう必要はありませんが、機嫌を損ねないようにうまーく交わしつつ、大人の対応をすることが求められます。
嫌な気持ちになることもありますが、温かい人も多いので、基本的には楽しいと思いますよ。
取材当日に確認すべきチェックリスト
飲食店はホームページを持っていないことも多いので、後から知りたいことができた場合、気軽に調べるのは困難になります。
- 住所
- 電話番号
- 営業時間
- 定休日
- 座席数
- 駐車場の有無と台数
- 撮影した商品名と値段(税込価格)
以上は基本情報となるので、取材当日にしっかりと確認しておきましょう。
食べログなどの掲載ページをプリントアウトして、「これで合ってますか?」と聞くのがスムーズです。
店主への質問例
著名人へのインタビュー取材と違い、事前に資料を読み込んでおく、などの必要性はあまり生じません(企画や媒体による)。
読者が知りたいのは、一言で表すと「その店に行く価値があるかどうか」。
そのためには、他店との差別化が必要です。
したがって、聞くべきことは例えば下記。
・食材はどこから仕入れていますか? (例:北海道産、地産地消)
・食材を仕入れるうえでの選定ポイントは? (例:有機農産物だけを使用)
・調味料は何を使っていますか? (例:30種類のスパイスを独自に調合)
・調度品のこだわりはありますか? (例:ヨーロッパ製の家具を輸入している)
・どんな客層に好評ですか? (例:20代女性を中心にインスタで人気)
逆に、最低限の情報でよいのは以下の項目です。
・店主の経歴
・お店のコンセプト
・体験イベントなどのニュース
「店主の思い」が全面に出すぎると、広告っぽい印象を読者に与えます。
広告っぽさ=誘導・押し売りされている感、を嫌う人は多いので気をつけましょう。
見出しで差をつける原稿の書き方
取材した内容を元に料理を食べた感想や居心地のよさなど、自分なりの視点を盛り込みます。
ただし、ベースはあくまで「客観的視点」。
「おいしい」「オシャレ」「雰囲気がよい」などの抽象的表現は控えめにしましょう。
注意点として、よく見かけるのは、「店を入れ替えたとしても通じる見出し」。
仮に「カフェ特集」というページがあり、6店舗掲載されるとしましょう。
このとき、なるべく各店舗の見出しに「カフェ」という言葉を使わないのが鉄則です。
だって全部カフェだから。
また、「女性に好評!ゆっくりと過ごせるカフェ」のように、どの店舗にも当てはまるような見出しも避けましょう。
その店にしかない特長を書かなくては見出しの意味がありません。
少し難しいですが、書き分けの訓練になりますよ。
まとめ
取材に応じてくれそうな時間帯を見極めたアポ取り、移動時間や駐車場などの入念な下調べ、ピンポイントで情報を引き出す質問力。
以上がライターに求められる基本的な能力ですが、当日の渋滞をはじめとする予定外のロスタイムなど、その場に応じた的確な状況判断も必要不可欠です。
なによりも機動力が求められる、グルメ系取材。
ライターとしてのスキルはもちろんですが、ベースとなる体力の向上や健康管理についても怠らないようにしましょう。