「やよいの青色申告オンライン」を使用して1年が経過しました。2月末には無事、確定申告も完了。問題なければそのうち還付金が振り込まれるでしょう。想像していたよりも大変でしたが、実際に使ってみて感じたメリットや注意点を備忘録として残しておきたいと思います。
会計ソフトを使用したきっかけ
青色申告のメリットのひとつ、青色申告特別控除制度。最大65万円を所得から差し引くことができますが、適用されるのは「複式簿記により記帳していること」「期限内にe-Taxで申告していること」などの条件があります。
会計ソフトを使用しようと思ったのは、シンプルに「65万円控除を受けたかったから」。さまざまなサービスを比較した結果、値段がお安めで、さらに1年間は無料で使える「やよいの青色申告オンライン」を利用することに。
最初は使い方もよくわからないから、とりあえず取引を順番に記録していきました。しかし、出版業界特有の事情が後々私を苦しめることになろうとは、この時は知る由もありません……。
複式簿記ってこんなに大変!
まず、複式簿記の大原則は「発生主義」。入金時ではなく、売上や費用が発生したタイミングで仕訳を計上しなくてはなりません。これの何が困るかというと、次の通り。
いつを「納品」とすべきか
商品の販売であれば、通常、現物を納品したタイミングが売上の計上時期。しかし、私のように原稿を納品しているライターにとって、どのタイミングが「納品」なのか、判断することが最初の壁でした。
例)雑誌の仕事の場合
3月1日:編集者に原稿を送付(A)
3月10日:修正指示が来る
3月15日:修正原稿を納品(B)
3月20日:入稿
4月20日:発行(C)
5月30日:入金
普通に考えれば納期は「A」のタイミングなんだけど、完納という意味では「B」や「C」のような気もする。しかし、修正指示があるかないかは編集者の判断次第。その間に何か月も間が空く場合も多いし、発行が年度をまたぐこともザラにある。
いつ売上を計上すべきか、これに慣れるまでかなり時間がかかりました。
結論:納品時(A)に売上を計上する。
理由:第三者に振り回されたくないので。
立替金の扱い
取材に行った際の交通費や経費は通常、源泉徴収税を引いた原稿料と一緒に振り込まれます。
私はこの経費をいつ仕訳するべきかわかっておらず、売上と一緒に計上していました。でも、発生主義の原則からすると、もちろんそのタイミングは電車を利用した日。
経費を支払った日、入金時のそれぞれで「立替金」として仕訳をするのが正解みたい。後で全部やり直しました……。
一般的な解説が参考にならない
(1)と(2)で紹介したように、フリーランスライターにとって納期の概念は曖昧で、さらに「実際に入金された額」「売上額」「源泉徴収税」「立替金」の帳尻が合うように簿記に記帳しなくてはなりません。
これがものすごく面倒臭いのですが、色んなサイトを見ても、自分とピッタリ同じ事例がなかなか載っていない。また、税理士に聞いても答えはバラバラだったりします。
インターネット検索をしていて気づいたら半日終わってしまった。。なんてこともよくありました。
会計ソフトを使って感じたメリットとは?
確定申告の資料をつくるのに合計3日以上は使ってしまい、想像以上に労力がかかりました。でも、良かったことももちろんあります。
お金の流れを管理できる
我々の業界には契約書の概念があまりありません。だから正直、納品したのに入金を忘れられていた、ということはザラにある。
今回、初めてちゃんとしたレポートや帳簿を確認してみて、「あ、これなら漏れにくいかも」と思いました。
何より、そこには一年間を通した自分の活動の履歴がすべて詰まっていて、言いようのない感動を覚えたのも事実です。
自分は細々した作業に向いていることを再確認
もともと私はスケジュールを組み立てたり、進行表に進捗を記入したりといった他の人が面倒がるコツコツした作業が得意だったりします。
慣れないうちは大変だけど、軌道に乗ってしまえば食事を忘れて熱中したし、「面白い」と感じることができました。
金融や会計関連の仕事をいただく機会も割と多いので、実際に経験したことはきっと今後に役立つことでしょう。
インボイスや電子帳簿保存法を見据えて
2023年10月から始まるインボイス制度、2024年に完全義務化される電子帳簿保存など、フリーランスにとってやらなければならないことは山積み。
今もかなり四苦八苦していますが、あと一年会計ソフトの導入が遅れていたら、完全に参っていたかもしれない……。
タイミング的にはベストだったかなと思います。
事業用・プライベート用の口座分けるか問題
何気に今回の確定申告で最も大変だったのは、クレジットカードと口座の問題。
個人事業主にとって事業用とプライベート用の口座を分けるかどうかは、判断が悩ましいところ。私は分けずにいたのですが、それで大変な目に遭いました……。
クレジットカードの出金記録と、銀行預金残高がどうやっても合わない。遡って見てみると、どうやら「商品を返品→返金された際の仕訳が漏れている」ことが原因。
でも仕訳方法で適当な事例が見つからず、膨大な時間を費やしました。プライベートの買い物なので本来なら事業に全く関係ないのですが、口座を一緒にしているから記帳しなければならない……。
これを機に、完全にクレジットカード&銀行口座を事業用・プライベート用で分けることを決意。トホホな思い出でしたが、まあこれも経験かな……。
まとめ
「苦手な会計処理は税理士に任せて、自分の本業や得意分野に邁進したほうがよい」
これはよく言われることであり、一理あると思います。でも、まずは自分でやってみたほうがいいんじゃないか、というのが私の考えです。
「あまりお金のことを言いすぎると卑しい奴だと思われるのではないか」――これは日本人特有の考えですが、曖昧にしておいたら正確に記帳できないので、しっかり詰めるところは詰められるようになります。
会社員しか経験していないと全て経理の人がやってくれるから、大して有難みも感じていないし、正直ずさんな人が多いと思います。
でも、自分の手でお金の流れを管理することで、今度は外注先・取引先への責任感が生まれ、付き合い方も変わるでしょう。
こうした小さな積み重ねが信頼関係の構築につながっていくのではないでしょうか。