思わず「論文か!!」とツッコミたくなるほど、文章が堅くなってしまう人っていますよね。根が真面目な人や、医師・学者・公務員など堅い仕事をされている方に多い気がします。
難解な言葉が並ぶ文章は、読み手の意欲を一気に下げる破壊力を持ちます。
せっかく良い活動をしていても、第三者に伝わらなくては意味がありません。そこで、覚えておきたい心がまえと実践テクニックを紹介します。
覚えておきたい3つのこと
文章を書き始める前に大切なのは、「読み手はどういう人なのか?」を想像すること。次の3つの前提をよく覚えておきましょう。
前提1:大半の人間は「なんとなく」読み始める
インターネットが普及して以来、「お金を払って情報を得る」ことがめっきりなくなりました。
特にネットニュースやSNSのコメントなど、「なんとなく」「片手間に」読んでいる人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
お風呂上がりにスマートフォンを見ていたところに、
「検疫所における検査の結果、印産脱脂大豆からアフラトキシンを検出したことから、食品輸入者に対して食品衛生法第26条第3項に基づく検査命令を実施し……」
なんてニュースが流れてきても、続きを読む気になりませんよね?
全神経を集中されなければ理解できないような難しい文章は、よい文章とはいえません。
「誰もが自分(の書く内容)に興味をもっている」と思うなよ!!ってコトです。
前提2:「専門知識があるか」と「活字に慣れているか」は別問題
「じゃあ、専門メディアなら小難しく書いてもいいんだ!だって読んでいるのはその分野に興味がある人でしょ?」
これもNO!です。
なぜなら、「知識がある人」が、「活字を読むのに慣れている」とは限らないから。
文化庁が全国 16 歳以上の男女を対象に行っている「国語に関する世論調査(平成30年度)」によると、47.3%が1か月に1冊も本を「読まない」と回答しています。
また、「官公庁などが示す『お知らせ』や広報等の文書を読む場合,どのようなことを望むか」の質問は、
文字の大きさ,字間,行間,レイアウトなどが見やすいこと…60.2%
親しみやすい表現が使われていること…59.9%
難しく堅苦しい漢字や語句が使われていないこと…46.6%
という結果に。
多くの人が「見やすく」「理解しやすい易しい文章」を望んでいることがわかります。
前提3:口語体は避けるのが基本
読みやすい文章と聞いて陥りがちな「だったらくだけた文章を書けばいいんだ!」という落とし穴。
例えば、(笑)などのメール等で使用する言葉や、「『え?なんでこうなるの?』と思った人もいるかもしれませんが……」といったまどろっこしい言い回し。
メディアの特性や使い方にもよりますが、あまり使いすぎると品位が下がるのでオススメしません。理由は以下の記事で解説しております。
文章は、「話し言葉」ではなく「書き言葉」にするのが基本。
まあ個人のブログでは許容範囲ですが、メディアへの寄稿ではできるだけ避けましょうね。
【例】口語体から文語体への変換
☓だって→◯したがって
☓でも→◯しかし
☓〜ですから→◯〜なので
ここまで崩さなくとも、読みやすく易しい文章は作れます。
やわらかい文章の書き方
読みやすく、内容が頭にスッと入ってくる文章は「やわらかい文章」です。いろいろ方法はありますが、簡単に実践できるものを紹介します。
漢字を減らす
漢字の割合が多い文章は「難しそう」、ひらがなの割合が多い文章は「子どもっぽい」印象を与えます。
漢字が多すぎても、ひらがなが多すぎても、読みにくいことに変わりはありません。
したがって、読みやすい文章をつくるにはバランスが肝心。
一般に、漢字:ひらがな=3:7の割合が黄金比といわれています。
といっても、いちいち割合を数えるのは面倒臭いですよね。
そんな方のために「漢字使用率チェッカー」なる便利なツールがありました。
あと、使用する機会の多い次の言葉はとりあえず全部ひらがなにしておきましょう。
- 有り難い→ありがたい
- 及び→および
- 様々な→さまざまな
- 従って→したがって
- 全て→すべて
- 辛い→つらい
- 出来る→できる
- (〜の)中で→なかで
- 等→など
- 一つ、二つ→ひとつ、ふたつ
- 目指す→めざす
加えて、熟語を減らすことも効果的です。
「増加する→増える」、「上昇する→上がる」、「発見する」→「見つける」などと変換することで、結果的にひらがなの分量が増えます。
専門用語やカタカナ語は避ける
最近では、ビジネスの場面でカタカナ語を多用する人も多いですね。
「アサインして!」だの「シナジー効果が〜」だの。
話し言葉ならふだんのクセが出てしまうのは仕方がないことですが、文章を書く上で専門用語とカタカナ語を多用する人はプロ失格と言ってよいでしょう。
なぜなら、読み手のことを一切考えていないひとりよがりな文章だから。
「コミュニケーション」など、すでに定着している言葉ならそのまま使っても問題ありませんが、これだって「交流」「意思疎通」という言い方もできますからね。
思いついた言葉をそのまま使う前に、まず辞書で調べる。
万人が理解できる言葉の言い回しを身につけましょう。
ひとつの文をふたつに分ける
最後はやや難易度が上がります。
読みやすい文章の特徴として大事なのは、(1)主語と述語の位置が近いこと、(2)一文が短いこと。
カタイ文章を書く人にありがちなのは、主語と述語の位置が遠くて何を言いたいのか伝わらないか、逆に簡潔にしすぎて説明不足であること。
例文
ヒトに感染するコロナウイルスは6種類あり、風邪の10~15%(流行期は35%)はヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)が原因です。 |
医学知識がない人にとっては何を言っているのかチンプンカンプンです。そこで、まず次のように修正します。
ヒトに感染するコロナウイルスは6種類あります。そのうち4種類は日常的にヒトに感染し、風邪の10~15%(流行期は35%)はこのコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)が原因となります。 |
ちなみに、用語説明をカッコでくくる人がいますが、カッコ内の説明が長すぎたり、文章のなかに何度もカッコが出てきたりすると気が散って、主旨が明確に伝わりません。
そんなときも文章をふたつに分けると読みやすくなります。
ヒトに感染するコロナウイルスは6種類あります。そのうち4種類は日常的にヒトに感染し、風邪の10~15%(流行期は35%)はこのコロナウイルスが原因となります。ヒトに感染するコロナウイルスのことを「Human Coronavirus:HCoV」と呼びます。 |
もしくは、(流行期は35%)は注釈に入れてもよいですね。
客観的視点を持とう
「文章がカタイ」「小難しくてよくわからない」とよく言われる人は、客観的視点が足りていない証拠。
今回紹介した方法はもちろん、ひとつの文を書くごとに自分で読み返し、「なんで?」「何が?」「どうして?」と自問自答するクセをつければ、おのずとわかりやすい表現に近づいていくのではないでしょうか。
あなたの思いが、きちんと相手に伝わりますように。